一人前の探偵 4

 日本茶とお話し頂いたお礼を言い別れ際に「普通の興信所の調査では私までたどり着けない。君は探偵として大切な物を持っている。」と言葉をかけて頂いた。

調査結果は必ずしも良い結果ばかりでない。しかし、依頼される方の心情に沿った調査が何より大切で、そのために何をすべきか?が探偵の技量になる事を教えて頂いた貴重な案件だった。

 

探偵の進むべき道しるべを見つけた。

 

 

一人前の探偵 3

 初老の男性は対象者の上司だった人物で、当時の様子を話してくれた。「彼は生真面目な正確で勤務態度も良好な従業員だったと・・・・」ただ一つ残念なことが。

「一緒に暮らしていた女性の浪費癖を嘆いていた。」私は対象者が失踪した確信に近づいていると感じた。

同棲女性が浪費とギャンブル好きで生活が苦しく、対象者自身も借金があったと。そんな話を耳にしてから間もなく対象者は退職したらしかった。もと興信所の調査員が失踪した原因が借金で、仮に債務の取り立てから逃げる事が理由ならば所在は判明しない。

 

初老の男性が言った。「ごくろうさんだったね。」

間を置いて「君は探偵としてやるべき事をしっかりやったと思うが。」

 

ありがたい言葉だった。初老の男性はこれ以上の所在調査の継続は困難だと理解していた。同時に結果が出ない調査になってしまった事も。依頼者ががっかりする顔も想像出来た。

 

 

 

 

一人前の探偵 2

 調査日程も終盤をむかえ、残すところ来訪先リストも2箇所になっていた。

有力な情報を得られないまま「このまま調査終了かと半ばあきらめムード」がメンタルに影をおとしていた。

いよいよ最後の訪問先。郊外の一戸建てで日当たりがよく庭を手入れしている初老の男性が見えた。挨拶を交わし来訪理由を告げると、全てを悟った口調で縁側に通され、温かい日本茶をごちそうしてくれた。

良く晴れた平日の午後だった。

 

 

一人前の探偵

 私自身「探偵として力がついた」と実感したきっかけの話をしたい。丁度10年程前に困難な所在調査の案件に着手していた。探している人物は「過去に探偵をしていた」人物で在籍していた興信所も閉鎖している状況だった。

手がかりは在籍していた興信所の関係者を精査する事なのだが、閉鎖してかなりの年数が経った現地の聞き込みから得られる情報は乏しく嫌なムードが漂い始めていた。

残された情報源は閉鎖謄本をさかのぼり役員欄をありったけ取得し、関係者を片っ端からあたる、まさに靴底をすりへらした調査だった。