一人前の探偵 3

 初老の男性は対象者の上司だった人物で、当時の様子を話してくれた。「彼は生真面目な正確で勤務態度も良好な従業員だったと・・・・」ただ一つ残念なことが。

「一緒に暮らしていた女性の浪費癖を嘆いていた。」私は対象者が失踪した確信に近づいていると感じた。

同棲女性が浪費とギャンブル好きで生活が苦しく、対象者自身も借金があったと。そんな話を耳にしてから間もなく対象者は退職したらしかった。もと興信所の調査員が失踪した原因が借金で、仮に債務の取り立てから逃げる事が理由ならば所在は判明しない。

 

初老の男性が言った。「ごくろうさんだったね。」

間を置いて「君は探偵としてやるべき事をしっかりやったと思うが。」

 

ありがたい言葉だった。初老の男性はこれ以上の所在調査の継続は困難だと理解していた。同時に結果が出ない調査になってしまった事も。依頼者ががっかりする顔も想像出来た。