一人前の探偵

 私自身「探偵として力がついた」と実感したきっかけの話をしたい。丁度10年程前に困難な所在調査の案件に着手していた。探している人物は「過去に探偵をしていた」人物で在籍していた興信所も閉鎖している状況だった。

手がかりは在籍していた興信所の関係者を精査する事なのだが、閉鎖してかなりの年数が経った現地の聞き込みから得られる情報は乏しく嫌なムードが漂い始めていた。

残された情報源は閉鎖謄本をさかのぼり役員欄をありったけ取得し、関係者を片っ端からあたる、まさに靴底をすりへらした調査だった。