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仮想通貨詐欺調査とは 興信所アーガス

はじめに

仮想通貨市場の急速な拡大と共に、仮想通貨を利用した詐欺事件が急増しています。ビットコインやイーサリアムなどのデジタル通貨の普及により、新たな投資機会が生まれた一方で、その匿名性や技術的な複雑さを悪用した犯罪も増加しています。興信所では、このような仮想通貨詐欺の被害に遭われた方々からの相談が日々寄せられており、専門的な調査技術と経験を活かして真相究明に取り組んでいます。

統計データによると、仮想通貨関連の詐欺被害は年々増加傾向にあり、その被害総額は数兆円規模に達しています。特に日本では、高齢化社会の進展と共に、デジタル技術に不慣れな高齢者を狙った詐欺が深刻化しています。また、コロナ禍による在宅時間の増加により、オンラインでの投資活動が活発化したことも、詐欺被害拡大の一因となっています。

仮想通貨詐欺は従来の金融詐欺とは異なる特徴を持ちます。取引の不可逆性、国境を越えた送金の容易さ、そして技術的な専門知識を要することから、被害者が自力で解決することは極めて困難です。また、規制当局や金融機関の対応も追いついていない現状があり、民間の調査機関による支援の重要性が高まっています。

さらに問題を複雑化させているのは、仮想通貨詐欺の多様性と進化の速さです。詐欺師は常に新しい手口を開発し、既存の対策を回避する方法を見つけ出します。人工知能や機械学習技術を悪用した自動化された詐欺システム、偽の著名人の推薦を利用したディープフェイク技術、そして分散型金融プラットフォームの脆弱性を突いた攻撃など、技術の進歩と歩調を合わせて犯罪手口も高度化しています。このような状況において、興信所は継続的な技術研究と人材育成を通じて、常に最新の脅威に対応できる体制を整えています。

仮想通貨詐欺の現状と手口

現在確認されている主要な仮想通貨詐欺の手口には、投資詐欺、フィッシング詐欺、ポンジスキーム、偽の仮想通貨取引所、そしてロマンス詐欺などがあります。投資詐欺では、高利回りを謳った偽の投資プラットフォームに誘導し、仮想通貨を送金させた後に連絡を絶つケースが多発しています。特にSNSやメッセージアプリを通じて勧誘される事例が増加しており、信頼できそうな投資グループに参加させてから詐欺を行う手口が巧妙化しています。

これらの投資グループでは、最初に少額の投資を推奨し、実際に利益を示すことで被害者の信頼を獲得します。グループ内では偽の成功体験談が頻繁に共有され、他の参加者も実在する人物のように装われています。詐欺師は心理学的なテクニックを駆使し、FOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖)を煽ることで、被害者により多くの投資を促します。また、期間限定のボーナスキャンペーンや紹介制度を設けることで、短期間での大きな投資を誘導する戦略も用いられています。

フィッシング詐欺では、正規の仮想通貨取引所やウォレットサービスを模倣した偽サイトを作成し、ログイン情報や秘密鍵を盗み取ります。これらの偽サイトは見た目が本物と区別がつかないほど精巧に作られており、URL の微妙な違いや SSL 証明書の詳細を確認しなければ判別が困難です。一度情報を盗まれると、保存されている仮想通貨が全て盗まれる可能性があります。

最近では、フィッシングの手口もより高度になっています。正規のサービスからの通知を装ったメールやSMSメッセージ、緊急性を演出したセキュリティアラート、さらには音声通話を使った巧妙な手口も確認されています。また、モバイルアプリストアに偽のウォレットアプリを公開し、ダウンロードした利用者の秘密鍵を盗む事例も増加しています。これらのアプリは正規アプリと似たような名前やアイコンを使用し、レビューも偽造されているため、一般利用者が見分けることは非常に困難です。

ポンジスキームでは、既存の投資家への配当を新規投資家からの資金で賄う構造を仮想通貨投資に応用し、持続不可能なシステムを運営します。初期の投資家には実際に配当が支払われるため、口コミで拡散されやすく、被害が拡大しやすい特徴があります。運営者が資金を持ち逃げするまで詐欺であることが発覚しにくいため、被害額が巨額になることも珍しくありません。

近年のポンジスキームは、分散型金融(DeFi)プロトコルやステーキングサービスを装った形態が増えています。これらは技術的な複雑さを利用して詐欺の仕組みを隠蔽し、投資家にとって理解が困難な構造を作り出しています。また、有名なインフルエンサーや企業家の名前を無断使用したり、偽の技術白書を作成したりすることで、信頼性を演出する手口も確認されています。

興信所による調査手法

仮想通貨詐欺の調査では、従来の調査手法に加えて、デジタル・フォレンジックや暗号通貨の取引追跡などの専門技術が必要です。興信所では、まず被害者から詳細な聞き取りを行い、詐欺の手口や相手方の情報、取引履歴などを整理します。この段階で重要なのは、可能な限り多くの証拠を収集することです。メッセージのやり取り、送金記録、相手方から提供された資料、取引プラットフォームのスクリーンショットなど、あらゆる情報が調査の手がかりとなります。

聞き取り調査では、時系列での出来事の整理が特に重要です。被害者は精神的ショックを受けていることが多く、記憶が曖昧になっている場合があります。経験豊富な調査員が、心理的な配慮をしながら段階的に記憶を喚起し、重要な情報を見落とさないよう注意深く進めます。また、家族や関係者からの情報収集も並行して行い、多角的な視点から事件の全容を把握します。

デバイスの保全と分析も調査の重要な要素です。被害者が使用していたスマートフォンやパソコンには、詐欺師とのやり取りや取引の痕跡が残されている可能性があります。これらのデバイスを適切に保全し、削除されたデータの復元や隠されたファイルの発見を行います。特に、ブラウザの履歴、キャッシュデータ、一時ファイルなどには重要な証拠が含まれていることが多く、専門的な解析技術が必要となります。

ブロックチェーン分析は仮想通貨詐欺調査の核心部分です。仮想通貨の取引はすべてブロックチェーン上に記録されており、この記録は改ざん不可能で永続的に保存されます。専門のツールを使用してトランザクションを追跡し、詐欺師のウォレットアドレスから資金がどのように移動したかを詳細に分析します。複数のアドレスを経由して資金洗浄が行われている場合でも、高度な分析技術により追跡が可能です。

しかし、ブロックチェーン分析には高度な専門知識が必要です。各仮想通貨の技術的特徴を理解し、適切な分析ツールを選択することが重要です。また、プライバシーコインやミキシングサービスが使用されている場合は、追跡が困難になるため、より高度な技術と創意工夫が求められます。興信所では、最新の分析技術と豊富な経験を持つ専門家が、これらの困難な案件にも対応しています。

国際的な協力体制も重要な要素です。仮想通貨詐欺は国境を越えて行われることが多く、海外の調査機関や法執行機関との連携が不可欠です。興信所では、国際的なネットワークを活用し、現地での聞き込み調査や資料収集を行います。また、各国の法制度や規制の違いを理解し、適切な法的手続きを踏むことで、効果的な調査を実現しています。

国際協力においては、言語の壁や文化的な違いも考慮する必要があります。現地の慣習や法的手続きを理解した上で、適切な方法でアプローチを行います。また、時差の問題もあるため、24時間体制での対応が可能な体制を整えています。これにより、迅速な情報収集と証拠保全が可能になります。

技術的な調査と並行して、人的情報収集も重要です。詐欺師は偽の身元を使用することが多いものの、完全に痕跡を消すことは困難です。SNSアカウント、電話番号、メールアドレス、銀行口座などから真の身元を特定し、過去の犯歴や関連事件との関係を調査します。また、詐欺グループの組織構造や役割分担を明らかにすることで、主犯格の特定や被害の全容解明に繋げます。

人的情報収集では、オープンソースインテリジェンス(OSINT)の手法も活用します。公開されている情報を組み合わせて分析することで、隠された関係性や詐欺師の行動パターンを明らかにします。また、過去の類似事件との照合により、同一犯行グループによる犯行の可能性を検討し、より広範囲な調査を展開することもあります。

証拠収集と法的手続き

仮想通貨詐欺調査において、証拠収集は極めて重要な作業です。デジタル証拠は改ざんや削除が容易であるため、適切な方法で保全し、法的証拠として活用できる形で整理する必要があります。興信所では、デジタル・フォレンジックの専門家が、ハードディスクやスマートフォンから削除されたデータの復元、メタデータの解析、暗号化されたファイルの解読などを行います。

証拠保全においては、チェーン・オブ・カストディ(証拠保管の連続性)の確保が重要です。証拠が収集された瞬間から法廷に提出されるまで、誰がいつどのように証拠を取り扱ったかを詳細に記録します。デジタル証拠の場合は、ハッシュ値の記録による完全性の保証、複製の作成と保管、アクセスログの管理などが必要となります。これらの手続きを厳格に実施することで、法的な証拠価値を維持します。

また、証拠の分析においては、複数の専門家による相互検証を行います。ブロックチェーン分析の結果、デジタルフォレンジックの発見事項、人的情報収集の成果などを総合的に評価し、一貫した事実関係を構築します。矛盾や不整合がある場合は、追加調査や再分析を実施し、確実な証拠固めを行います。

ブロックチェーン上の取引記録は公開されているものの、その解釈と分析には専門知識が必要です。トランザクションID、ブロック高、タイムスタンプ、手数料などの詳細情報を正確に記録し、取引の流れを時系列で整理します。また、複数の仮想通貨や異なるブロックチェーン間での資金移動がある場合は、それぞれの特性を理解した上で総合的な分析を行います。

取引分析では、視覚的な表現も重要です。複雑な資金移動の流れを図表やチャートで表現することで、調査関係者や法執行機関にとって理解しやすい形で情報を提供します。特に、大量のトランザクションがある場合は、重要な流れを特定し、ノイズとなる無関係な取引を除外することで、明確な資金追跡結果を示します。

法執行機関との連携では、刑事告発や告訴状の作成支援も行います。仮想通貨詐欺は新しい犯罪形態であるため、従来の詐欺罪の構成要件に当てはめる際に注意深い検討が必要です。被害の立証、故意の証明、因果関係の説明などを明確にし、検察官や裁判官にも理解しやすい形で証拠を整理します。

刑事手続きにおいては、国際的な法執行協力も重要な要素です。犯人が海外にいる場合や、証拠が海外のサーバーに保存されている場合は、相互法的援助協定(MLAT)や国際刑事警察機構(インターポール)を通じた協力要請が必要になります。これらの手続きは時間がかかるため、早期の準備と適切な書類作成が重要です。

民事訴訟においては、損害額の算定と回復可能性の評価が重要です。仮想通貨の価格変動を考慮した損害額の計算、詐欺師の資産状況調査、海外資産の特定と差押え手続きなど、複雑な問題に対応します。また、被害者が複数いる場合は、集団訴訟の可能性も検討し、効率的な権利回復手段を提案します。

損害額の算定では、被害発生時点の仮想通貨価格だけでなく、現在価格や将来予測も考慮する場合があります。また、機会損失や精神的損害についても適切に評価し、被害者の権利を最大限保護するよう努めます。さらに、税務上の取り扱いについても専門家と連携し、被害者にとって最適な解決策を模索します。

調査の困難性と限界

仮想通貨詐欺調査には、従来の詐欺捜査では経験しない特有の困難があります。最も大きな課題は、仮想通貨の匿名性と国際性です。ブロックチェーン上ではアドレス同士の取引記録は公開されているものの、そのアドレスが誰のものかを特定することは容易ではありません。特にプライバシーコインやミキシングサービスを利用された場合は、資金の追跡が極めて困難になります。

また、詐欺師は複数の国に跨って活動することが多く、各国の法制度や捜査協力体制の違いが調査の障壁となります。ある国では合法的な活動として認められているサービスが、他国では規制対象となっているケースもあり、法的な解釈や手続きが複雑化します。さらに、一部の国では仮想通貨に関する法整備が不十分であり、有効な捜査協力を得ることが困難な場合もあります。

技術的な進歩の速さも調査を困難にしています。新しい仮想通貨やブロックチェーン技術が次々と登場し、それに応じて新しい詐欺手口も生まれています。分散型取引所(DEX)の普及により、従来の中央集権的な取引所を経由しない取引が増加し、資金の流れを追跡することが一層困難になっています。スマートコントラクトを悪用した詐欺では、契約の内容を理解するために高度な技術知識が必要となります。

時間の経過も重要な要因です。仮想通貨の取引は24時間365日行われており、詐欺師は被害発覚後すぐに資金を移動させる可能性があります。また、多くの取引所では一定期間経過後にログが削除されるため、早期の対応が不可欠です。しかし、被害者が詐欺に気付くまでに時間がかかることが多く、調査開始時点で既に重要な証拠が失われている場合もあります。

被害回復の実際と課題

仮想通貨詐欺における被害回復は、従来の詐欺事件と比較して格段に困難な課題です。最大の障害となるのは仮想通貨取引の不可逆性です。一度送金された仮想通貨を取り戻すためには、詐欺師が自主的に返還するか、法的手続きを通じて強制的に回収するしかありません。しかし、詐欺師が身元を隠している場合や海外に逃亡している場合は、実際の回収は極めて困難になります。

資産の特定と保全も重要な課題です。詐欺師が取得した仮想通貨は、複数のウォレットアドレスに分散されたり、他の仮想通貨に交換されたりすることが多く、その全容を把握することは困難です。また、仮想通貨取引所の協力を得て資産を凍結することができても、詐欺師が既に資金を引き出している場合は回収できません。さらに、分散型取引所やプライベートウォレットに移された資産については、法的な差押えが実質的に不可能な場合があります。

国際的な資産回復手続きはさらに複雑です。詐欺師が海外の取引所を利用している場合、現地の法執行機関や金融当局との協力が必要になります。各国の法制度や手続きの違い、言語の壁、時間差などが障害となり、迅速な対応が困難になります。また、一部の国では仮想通貨に関する法的枠組みが整備されておらず、有効な支援を得ることができない場合もあります。

民事的な救済手段としては、詐欺師個人に対する損害賠償請求や、仮想通貨取引所に対する責任追及があります。しかし、詐欺師の資産状況や支払い能力を考慮すると、判決を得ても実際の回収は困難な場合が多いのが現実です。取引所に対する責任追及についても、セキュリティ対策の義務違反やマネーロンダリング防止義務の違反を立証する必要があり、高度な専門知識と証拠収集が要求されます。